2022年6月25日(土)、昨年に引き続き本学としては2回目となる藤野里山体験ツアーを実施しました。「藤野」は神奈川県相模原市西部、山梨県との県境に位置する緑豊かな地域です。この企画は藤野観光協会が定期的に開催している藤野里山体験ツアーをアレンジして本学の学生向けに開催したものです。
本学の相模原キャンパスは相模原市内でも住宅街にあり、同じ市内に緑と川に囲まれた里山の風景や暮らしがあるということは、普段キャンパスに通学しているだけでは感じることができないものではないかと思います。
企画の性質上、参加者は10名を上限としていたため、今回は10名の青学生(相模原キャンパス7名、青山キャンパス3名)が参加しました。
朝9時半、6月とは思えない暑さの中、参加者たちはそれぞれ少し緊張した面持ちでJR中央本線の藤野駅に集合しました。事前の参加者説明会はオンラインで実施していたため、ほとんどの学生たちがこの時初対面という状況でした。
藤野駅を降りると正面に見える山の中腹に藤野のシンボル「緑のラブレター」が目に入ってきます。藤野は芸術のまちとしても知られており、この巨大なラブレターのアートをはじめ様々な芸術作品がこの地域に点在しています。
観光協会が手配してくれた車3台に分乗し、今回のホストをしていただける石毛さん夫婦が住む古民家へ。石毛さんからこの日の体験内容の説明を受け、裏山へと登っていきます。
適切な間伐がされない山林は日光が地面まで届かずに荒れてしまうことや、搬出コストを抑えて一般人が安全に取り組める「皮むき間伐」という方法について説明を受けながら、更に山の奥へと入っていきました。
また、山の中ではヤマビルが多く出るので注意するよう学生たちには周知していたものの、実際にヒルが出てくると学生たちはちょっとしたパニックになり、一時足を止める場面もありましたが、しばらく経つとヒルたちの攻撃にも少し慣れてきた様子でした。
この山林では石毛さんの指導のもと、実際に皮むき間伐を体験し、だれが一番長く木の皮を向けるかなど、楽しみながら作業を行いました。
こうして皮をむいた樹木は時間をかけて立ち枯れ、水分が抜けた軽い状態になるため、伐採した際には生木よりも軽く運搬しやすくなるということです。
里山とはいえ、しっかりと整備された登山道があるわけでもなく、斜面も急なため学生たちにとっては少しハードな体験になったのではないかと思います。
皮むき間伐体験を終え山林を下る途中、石毛さんが作ったツリーハウスや遊具を見せていただきました。学生たちはツリーハウスの中でくつろいだり、ジップラインで遊んだりと思い思いの方法で楽しんでいました。
里山から再び石毛さん宅に戻ってきた一行は、付近の小川でお昼休憩をとりました。澄み切った冷たい川の水に午前中の疲れを癒され、またこのツアーで出会った他の学生たちとそれぞれの学部の話で盛り上がるなど、学生たちの間には朝の緊張した表情は見えませんでした。
午後は石毛さん宅で間伐材を利用した箸作り体験を行いました。四角い棒状の小さな木材をナイフやカンナを使って箸の太さになるよう削っていきます。ある程度箸の形になってきたら紙やすりで形を整え、最後に食用油を塗って完成です。箸の太さや形など、それぞれにこだわりや個性が見られる作業となりました。
箸作りの後は石毛さん夫婦と観光協会の佐藤さん、田中さんよりお話をいただき、藤野の魅力や里山で暮らすということについて、実体験をもとに様々なお話を聞くことができました。このお話を受けて、学生たちからは地域通貨や地域のコミュニティの人間関係などについて質問が投げかけられ、学生たちの地域への関心の高さがうかがえました。最後には参加者一人一人からの感想とお礼を述べて里山を後にしました。
今回、藤野の自然の中で里山での暮らしを一部体験し、学生たちにとっては普段大学のキャンパスに通っているだけではできない貴重な体験になったことと思います。学生たちにとってこの日は「非日常」の体験でしたが、これを「日常」の一部として生活している人たちが相模原地域にいること、またこれをきっかけに藤野をはじめとした日本の中山間地域、里山の魅力や課題について少しでも考えてもらえる機会となっていれば幸いです。