2022年11月29日に開催した「ヒューマンライブラリー@青学」では、同年6月に開催した「ヒューマンライブラリー入門講座」の参加者を中心に、ヒューマンライブラリー学生司書プロジェクトとして、企画・運営を進めてきました。(ヒューマンライブラリー@青学の開催レポートはこちら)
ヒューマンライブラリーにおける司書は、「本」となるゲストと「読者」(参加者)の繋ぎ役として、「本」役との事前の打ち合わせを行い、「本」役の一番の理解者として、「読者」にその魅力を伝える役割を担います。
今回は、学生司書プロジェクトメンバーの一人から、プロジェクトに関わった体験談を紹介します。
【司書になろうとしたきっかけ】
ゼミの研究でインターセクショナリティの概念を学んだことがきっかけです。
マイノリティや差別問題について考察する中で、多様性理解のためにはカテゴライズを取り払った個人と個人の対話が重要であると気付きました。そこでヒューマンライブラリーの企画、運営に携わることで人々が繋がる場を提供したいと考え、司書に立候補しました。
【ミーティングや本との打ち合わせの中での学び】
さまざまな学びがありましたが、”普通”という概念の脆さに気付くことができたのが最も大きな学びです。
私の担当はXジェンダー、摂食障害、クレプトマニア(窃盗依存症)の過去を持ち、現在は依存症予防教育アドバイザーとして活動している悠さんという方でした。
マイノリティの複合的な経験を持つ悠さんは「自分とは違う世界の人だな」と心のどこかで距離を感じていましたが、話進める中で共感できる点が多くありました。他者の経験やそこから生まれた価値観を受容し、自分なりに咀嚼することが自己への新たな理解に繋がるのだと痛感しました。「人と人とのバリアを解消する」というヒューマンライブラリーのテーマがまさに実現された有意義な機会で、当日へのモチベーションも一層高まりました。
<司書が作成した「本」のあらすじ(他のあらすじはこちら)>
【ヒューマンライブラリー@青学当日について】
「私自身を知ろうとしてくれていたのでとても話しやすかった」という本役の方の言葉が印象に残っています。ヒューマンライブラリーには様々な経験やバックグラウンドを持つ方が「本」役になってくださったのですが、カテゴリーではなく話し手自身の経験や価値観について興味を示す「読者」(参加者)が多く見られました。
プロジェクトの主眼はマイノリティへの理解という一方的なものではなく、対話を通した相互理解によって互いの価値観をアップデートすることです。「読者」となった参加者の皆さんがフラットな姿勢で対話に臨んでくれたことが、「ヒューマンライブラリー@青学」の最も大きな成功要因だと考えます。
当日はタイムマネジメントや司書の立ち回りについてイレギュラーもありましたが、会場にいた全員でこのような場を作り上げられたことに大きな達成感と喜びを感じました。
<当日の対話の様子>
【プロジェクト全体を通しての感想】
人間は自分の見聞きしたものや経験によって物事の捉え方や思考の枠組みが構成されています。だからこそ、新しいコミュニティに飛び込んでみたり、異なる価値観に触れたりすることで自身の当たり前を壊していくことが重要なのだと思います。
人である以上偏見を完璧になくすというのは難しいですが、自分の知らないものに対する心理的なハードルを下げ、「理解はできないけど否定はしない」というマインドを持つことが世の中の生きやすさにつながるのではないでしょうか。
コロナ禍やデジタルシフトによって人と人との結びつきが一層希薄になったと感じる今だからこそ、他者に対する自分のスタンスをやわらかくし、常に自身をアップデートしていきたいです。その第一歩として、ヒューマンライブラリーはこれ以上ない素敵な機会でした。
「社会を良くする」というと少し無謀な感じがしますが、ポジティブなインパクトを波紋のように、自身の周囲から少しずつ広げていけたらなと思います。
今回のプロジェクトには多くの方が協力してくださり、たくさんの良い出会いに恵まれました。ここで得た学びや縁を大切に、次に繋げられるよう活動を続けていきたいと思います。貴重な機会をありがとうございました。
<イベントを無事に終え、司書から「本」のみなさんへお礼のメッセージをお渡ししました>
<「本」のみなさんと司書メンバーで集合写真>
国際政治経済学部国際政治学科3年
上野綾子